アパレル派遣でも退職金は支払われる?知っておきたい制度とは
職場を退職するときに受け取る退職金。長きにわたって正社員として勤めた会社を退職するときにもらうイメージをしている方も多いでしょう。では、最近増えている「派遣」という働き方では、退職金は出るのでしょうか?今回は、アパレル業界に注目して、派遣スタッフの退職金について解説します。
アパレル業界の退職金事情
アパレル派遣の退職金について見る前に、アパレル業界全体の退職金事情を把握しておきましょう。
年収と勤続年数で退職金は変わる
退職金は、年収と勤続年数によって変わります。アパレル業界の中でも派遣として働くことの多い販売員で見ていきましょう。アパレル販売員として正社員で働く場合の年収は、店長だと20代後半で250~300万円、30代前半で300~330万円、30代後半から40代前半で330~350万円ほどが相場です。店長ではなく、販売スタッフやリーダーの場合、店長の7~8割程度の年収になります。
そして退職金は、月額基本給×勤続年数×給付率によって算出されることが多いです。ここで言う月額基本給とは、月収から手当などの費用を除いた基本給のことを指します。この計算式にもとづいて退職金を計算すると、新卒から正社員として10年務め、月額基本給22万円だった社員の退職金は、22万円(月額基本給)×10(勤続年数)×0.45(給付率45%の場合)=約100万円となります。
派遣法改正により派遣スタッフでも退職金が支払われるようになった
2020年4月に改正された派遣法によって、同一労働同一賃金というルールが定められ、派遣スタッフにも退職金が出るようになりました。同一労働同一賃金とは、正社員と同じ業務内容や責任範囲であれば、給与や待遇も正社員と同じにするというルールです。同一労働同一賃金のルールが定められたことで、正規雇用と非正規雇用の格差をなくすことを目指しています。
派遣スタッフの退職金の決め方
派遣スタッフの退職金は「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のいずれかの方法で決められます。正社員と同じような計算式で決められるわけではないのです。一つひとつ詳しく見ていきましょう。
派遣先均等・均衡方式
派遣先均等・均衡方式の場合、就業先企業の正社員への給与と待遇を基準として、派遣スタッフの給与と待遇を決めるものです。つまり、就業先企業の正社員と同じように退職金が出るということです。
派遣先均等・均衡方式は、就業先企業が、自社の給与や待遇に関する情報を派遣会社に提供する必要があります。ここで注意点があります。それは、退職金はすべての企業で出るわけではないということです。就業先企業が退職金制度のない会社であれば、当然派遣スタッフにも退職金は出ないでしょう。
労使協定方式
労使協定方式とは、派遣会社と派遣スタッフの代表者が話し合って労使協定を締結し、その内容に沿って、派遣スタッフの給与や待遇を決めることです。就業先企業の退職金事情は関係なく、派遣会社と派遣スタッフの代表で、退職金を含めた給与や待遇について決められます。労使協定で定められた条件を満たせば、派遣スタッフでも退職金が出る方式です。
派遣スタッフがもらえる退職金制度
派遣スタッフが退職金をもらうには、4つの制度があります。派遣先均等・均衡方式で適用される「就業先企業の退職金制度」労使協定方式で適用される「派遣会社の退職金制度」「退職金前払い制度」「中小企業退職金共済制度」です。それぞれの特徴を見ていきましょう。
就業先企業の退職金制度
派遣先均等・均衡方式で適用される制度で、就業先企業の退職金規定にのっとって退職金が出ます。ただし、就業先企業の退職金制度では「勤続3年以上」という条件が設けられていることが多いです。派遣スタッフは、最長3年しか派遣として働けないため、退職金制度の条件に当てはまらない可能性があります。
派遣会社の退職金制度
労使協定方式で適用される制度で、派遣会社の退職金規定にのっとって退職金が出ます。派遣会社の退職金制度では、月額基本給×勤続年数×給付率で計算されます。ただし、これも就業先企業の退職金制度と同様、勤続3年以上の条件を満たさないと出ないことが多いです。
退職金前払い制度
退職金前払い制度は、その名のとおり退職金が前払いされる制度です。といっても、事前にあらかじめまとまった金額が出るのではなく、退職金に相当する金額を時給に加算して、毎月の給与として出ます。退職金が加算されている分、時給が高くなるのが特徴です。勤続3年以上というルールに関係なく、退職金をもらえるのが大きな魅力でしょう。
中小企業退職金共済制度
中小企業退職金共済制度は、派遣会社が中小企業退職金共済制度に毎月掛け金を払い、中小企業退職金共済制度が退職金の積み立てと管理をする制度です。この制度を適用する場合、もらえる退職金は、掛け金×勤続年数×年齢で計算されます。
まとめ
退職金と聞くと、正社員しかもらえないというイメージが強いでしょう。しかしそれこそが、正規雇用と非正規雇用の格差なのです。2020年4月に派遣法が改正されたことにより、きちんと条件を満たせば、派遣スタッフでも退職金が出ます。これから派遣スタッフとしてアパレル業界で働きたいという方は、派遣会社の退職金についての規定を事前にリサーチしてみましょう。